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絵の日 ─世界に白いところはある?ー

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10月の「◯◯の日」は「絵の日」でした。

一人の子どもの「コンクールに出したい!」という声をきっかけにWebで検索してみると、ちょうどもうすぐ募集があるものを発見。描いた作品は、ブリヂストンが主催するコンクールに応募することにしました。

第15回ブリヂストンこどもエコ絵画コンクール

さくせんかいぎの時点では、なんでも好きなものを描こう!と言っていたのですが、(これは、図工の授業では必ず題材が決まっているし、小学生って実は自由に絵を描く時間が殆どないのでは?と思ったためでした。)コンクールの絵のテーマは「ずっと みていたい しぜん」です。

「お花畑かくねん」と言い、あっという間にクレヨンで2本の花とちょうちょ、おひさまを描いて「できた!」と満足そうな女の子。もうちょっと描けそうだなと思ったので、

「この白いところには、何があるん?」

と聞いてみました。

「ここは何もない」
「でも、何もないところってあるんかな?まわりを見てみ。この部屋の中にも、運動場にも、道路にも、何もないところってなくない?」
「……ない」
「じゃ、お花畑のここには何があるやろ。描いてみようよ」

彼女はしばらく考えて、ハチやたくさんの花を描き始めました。画用紙の白いところがどんどんにぎやかになっていきます。

私は美術のプロではないので上手な絵の描き方は教えられませんが、ここで子どもたちが絵を描く日があるたびに、どうやって描けばおもしろいか、どんなことを考えながら描けば子どもの力になるか、と考えるようになりました。国語や算数の問題に向かっている時よりもますます答えのないこの問い。この日は、「世界に白いところはない」というのが私のテーマになりました。

そのきっかけは、ある子の絵の描き方にありました。彼は茶色いペンで細い枝を何十本、何百本と描き続け、その先にピンクのペンで小さな丸を描いていました。そしてまた、ちびちびと枝を描き始めます。まなびべやは約2時間。この描き方ではきっと時間内には完成しません。そんなことは(おそらく)考えもせず、集中力と指先の力を要する細かい作業に、時折「疲れた!」と叫んで席を立ち、しばらくソファで休んではまた戻って線と点を描く。その様子から、自分の頭の中にある木をそのまま紙の上に表現しようとしていることが伝わってきました。途中で「誰か上手い人が描いた桜の絵見せてよ〜」と言われたのですが、「自分で考えて描こう」と断りました。その方がおもしろいし、力になるだろうと思いました。

この日は他にも、興味深い出来事が。私が子どもたちの机を離れていた時、

「真似せんといて!」

と一人の子が怒り出しました。自分が描いた絵にそっくりな絵を隣の子が描きはじめたのです。誰が見てもわかるほど、はっきりとした真似でした。これはどうしたものか、と少し考えました。

──真似することは悪いことなのか?
──真似された子、真似した子に、それぞれなんて声をかけるのがいいのか?

結局、私はふたりにこう話しました。

真似された子には、「腹が立つのもわかるけど、真似されるってことはこの絵がかっこいいってことやで。自慢していいことやで」と。

真似した子には、「誰かの真似をして上手くなることもあるけど、今は真似じゃなくて自分の頭の中のことを描こうか。その方がきっと素敵やで」と。

この言葉が子どもたちにどう響いたのか、この対応で合っていたのか、正直なところ私にはわかりません。子どもたちと接していると、正しさや良し悪しの物差しだけでははかれないこと、簡単には答えの出ないことがたくさんあります。ほとんどがそうかもしれません。その時は、ごまかしたり知ったかぶりをするのではなく、私はこう思う、ということを正面から伝えるしかないのかなと思います。

大きな桜の木の絵はやっぱり完成せず、12月までに続きを描くことに。その姿を見たら、他の子の絵にも続きが生まれるかもしれません。制限時間も最後の問題もない絵の場合、どこで完成かを決めるのは子ども自身です。どんな絵ができあがるか、とても楽しみです。